5.材料と道具

さて、次は材料と道具の用途や特徴について、書いていきます。

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1.本体のMDF
価格:約30,000円(内送料:5,500円)重量:約65.5 kg
MDF(medium-density fiberboard)とは、木繊維を接着剤で加工した物で、DIYによく使われます。
最初は、ベニヤ板を使おうとしていましたが、経年変化で板が反る恐れがあるので、MDFを使うことにしました。2年近くの間、割と風通しが悪く湿気の多い環境に防音室を置いていますが、板が大きく反って防音性能に支障が出る等といったことは、今のところありません。
高さ939や894の板は、それより少し大きめの板を購入先の「オカモク楽天市場店」やホームセンターでカットしてもらって作りました。
50×915×12の板はホームセンターで手に入れました。この板に関しては、今思えば、MDFではない木材を買ったかもしれません。何を買ったかは忘れました。
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2.サイレンサーのMDF
価格:約4,000円 重量:約10 kg
一番左の板は底と床用、その次はジグザク迷路用、最後の2種類は壁用です。全てホームセンターで手に入れましたが、ネットでも探せばあると思います。上述したように、この寸法でサイレンサーを作ると消音に失敗するので、真似しない方がいいと思います。
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3.不織布
価格:2,475円
内装用です。MGボードの上から張って、格好を付けます。

4.パンチカーペット
価格:2,420円
サイレンサーの内側に貼り付けて、音の減衰の効果を高めます。

5.壁紙
価格:10,794円
外装用です。格好を付ける為と、MDFを湿気から守る為に張りました。でも、張る必要はなかったのかもしれません。なぜなら、不要になったMDFを、裸のままで2年近く部屋に放置しても、カビは生えなかったからです。1万円の出費は中々の痛手です。

6.遮音シート
価格:5,800円 重量:約21 kg
「サンダムCZ-12」という商品を使いました。MDFの上に張り付けて、外部の音を遮断します。それにしても、21 kgとかなりの重さです。
重さの理由は、音が伝わる仕組みにあります。音が壁にぶつかると、壁は振動します。その振動によって、壁の反対側にも音が伝わります。音を遮断する為には、出来るだけ振動しにくい重い壁や素材が必要になるということです。
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7.強力両面ボンドテープ
価格:5,610円
遮音シートの上からMGボードを貼り付ける時に使います。

8.ダクトテープ 黒
価格:1,233円
内装用です。不織布が上手く張り付いていない部分や、はがれそうになっている部分などを、これで誤魔化します。

9.ダクトテープ 白
価格:1,233円
外装用です。壁紙の四隅ははがれやすくなっているので、上からこのテープを張り付けることで固定します。天井部を色々と誤魔化す為にも使います。

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10.防音マット
価格:11,407円 重量:約5.6 kg
「サンダムE-45」という商品を使いました。4枚入りですが、使うのは1枚だけです。床のMDFの上から張り付けて、防音効果を高めます。

11.コルクマット
価格:2,671円 重量:約100 g
防音室の下に敷いて、フローリングに傷が付かないようします。まぁ、既に製作過程で結構傷付いてしまっていますが……

12.防音カーペット
価格:5,225円
「静床ライト」という商品を使いました。防音マットの上に敷いて、防音効果をより高めます。
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13.L字金具
価格:約1,000円
本体のMDFを組み立てる時に使います。

14.蝶番
価格:約1,500円
扉を取り付ける時に使います。

15.取っ手
価格:約500円
取っ手です。本来なら2つで足りるはずですが、適当に扉を作ってしまうと余計に1つ必要になるのは、上述した通りです。

16.取っ手用MDF
価格:約500円
このMDFを5枚重ねると、5 cmの厚さになります。MGボードと同じ厚さです。このMDFを使って、扉の内側の取っ手がMGボードに埋もれないようにします。
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17.シリコンシーラント
価格:約930円
「セメダイン JIS シリコーンシーラント 8060 330ml」という商品を使いました。木と木を組み立てた時に出来る僅かな隙間に、このシリコンを流し込みます。隙間が開いているままだと、そこから音が漏れてしまうからです。

18.コーキングガン
価格:384円
これにシリコンシーラントを装着して使います。

19.MGボード
価格:34,400円 重量:約35.2 kg
MGボードとは、ロックウールを白いガラスクロスで覆った吸音材です。遮音シートの上から貼り付けて、内部の音を吸収します。
ロックウールとは、天然岩石を高温で溶かして繊維状にした物です。健康被害で問題になったアスベストに形状が似ていますが、アスベストに比べて体内に入りにくく、入ったとしても排出されます。

20.ネジ
価格:約1,000円
本体やサイレンサーを組み立てる為に使います。数は覚えていません。扉の取っ手を取り付ける際は、長めのネジを使いました。
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21.タッカー
価格:1,100円
遮音シートや防音マットを張り付ける時に使いました。大きなホッチキスのような物です。

22.ステープル
タッカーの芯です。タッカーを買った時に付属していました。

23.換気扇
価格:1,564円 重量:約1.1 kg
「トイレファン先端形 VT-16」という商品を使いました。サイレンサーの上に取り付ける換気扇です。

24.カッター
価格:427円
MGボードを切る時に使います。
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25.布用接着剤
価格:約1,000円
不織布をMGボードに張る時や、パンチカーペットをサイレンサー内部に貼る時に使ったと思います。どんな物を使ったかは覚えていません。

26.木工ボンド
価格;96円
サイレンサーを組み立てる時に使います。

27.電動ドライバー
価格:5,000円
「RYOBI 充電式ドライバードリル 7.2V BD-710」という商品を使いました。普通に動く物なら何を使ってもいいと思います。

28.塩ビパイプ
価格:約400円
天井とサイレンサーの吸気口と排気口の部分に付けます。直径5 cmぐらいの物を使いました。

29.突っ張り棒
価格:495円
天井にMGボードを貼り付ける時に使います。
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30.棒やすり
価格:1,341円
MDFに穴を開けた時、そのままだと縁がガタガタなので、これで削って滑らかにします。

31.家具用突っ張り棒
価格:1,737円 約0.65 kg
「平安伸銅工業 家具転倒防止突っ張り棒 REQ-22」という商品を使いました。地震対策です。

32.古新聞
価格:150円
これを床に敷いて作業します。新聞を取る習慣がないので、わざわざコンビニで買いました。

33.脚立
価格:2,180円
天井にサイレンサーを取り付ける時などに使います。
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34.軍手
これを付けないと、MGボードを切る時にロックウールが手に刺さって、チクチクします(経験者は語る)。

35.マスク
これを着けないと、MGボードを切る時にロックウールを吸い込んで、喉が痛くなります(経験者は語る)。

36.長ズボン
これを着ないと、MGボードを切る時に……あとは察してください。

37.長袖
これを着(省略

全部で14万円になります……この数字については「まとめ」で語ります。

6.製作過程

それでは、製作過程について書きたいと思いますが、なんと、製作過程の写真を無くしてしまいました。記録としては、最悪です。でも、もうここまで書いてしまったので、あとは絵と文章でどうにか頑張って説明します。

実際の製作過程は書きません。あまりにも行き当たりばったりで滅茶苦茶だからです。例えば、本体を組み立てる時に、1825mmのMDFを2枚立てた状態で、友達に手で支えてもらいながら僕がネジで固定するというような具合です。当然、真面に組みあがるはずはなく、結局全て分解する羽目になり、何枚かのMDFは無駄になりました。
そのような愚行を反省する意味でも、出来るだけスマートな製作手順を考えて、書いていきたいと思います。それではどうぞ。

1.サイレンサーの底と蓋に穴を開ける
まず、サイレンサーを途中まで作ります。底と蓋の板に、塩ビパイプにそってペンで印を付けて、その印をなぞるようにドリルで穴を開けていきます。開け終わったら、ガタガタの穴の縁を、棒やすりを使って滑らかにします。
穴を開ける時は、何かコンクリートブロックのような固い物を用意して、そこに橋を渡すように板を置いて、安定した状態で作業に臨みます。
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2.本体の天井に穴を開ける
サイレンサーの底板を本体の天井板の上に乗せて、印を付けて、安全な方法で穴を開けます。

3.サイレンサーの中身を組み立てていく
サイレンサーの底板に、壁や迷路用のMDFをボンドで貼り付けていきます。蓋はまだ閉めません。

4.本体を組み立てる
下図のように、MDFを横長の状態で床に置いて、内側からL字金具とネジで固定します。もちろん、外側からも板と板をネジで固定します。
これが正しい方法なのかどうかは分かりません。そもそも、本来なら土台を先に作ると思うので、こんな組み立て方はしないでしょう……まぁそれはいいとして、本体が組みあがったらそれをコルクボードの上に立てた状態で載せます。
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5.通線穴を開ける
本体の壁に通線穴を開けます。録音機材が置いてある場所のすぐ近くの部分に開けました。
6.扉を付ける
蝶番で扉を付けます。本体がゆがんでさえいなければ、きちんと扉がはまります。

7.本体やサイレンサーの隙間を埋める
本体やサイレンサーの木と木の継ぎ目に、シリコンシーラントを流し込んだ後、ヘラで均して、半日ほど乾かします。
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8.サイレンサーを完成させる
サイレンサーの内部と蓋の内側に、パンチカーペットを布用接着剤等で貼り付けます。そして、ボンドで蓋を接着して、上からファンを取り付けます。

9.防音シートと防音マットを張る
タッカーを使って、本体の内部に遮音シートと防音マットを張り付けます。張り終わったら、天井の通気口と排気口の部分に穴を開けて、壁の通線穴の部分に×印の切り込みを入れます。

10.MGボードを貼る
MGボードを天井の大きさに切り分けます。切り分けたMGボードを天井に押し当てて、突っ張り棒で固定した後、脚立を使って天井の上から穴にそってMGボードに穴用の印を付けます。そして、MGボードを取り外して、カッターを使って印にそって穴を開けます。
その後、そのMGボードに強力両面ボンドテープを貼り、はく離紙をはがして接着面を露出させた状態で天井に押し当てて、また突っ張り棒で固定します。その間に、壁や扉用のMGボードを作って貼っていきます。全て貼り終わったら、ボードとボードの継ぎ目にダクトテープを貼って、固定します。
その次に、通線穴の部分のMGボードをカッターでくり抜きます。くり抜いた部分は、黒いダクトテープや不織布を使ってブロック状に加工します。

11.内装に不織布シートを張る
MGボードの上から不織布を貼ります。上手く張り付かない部分は黒いダクトテープで補強します。

12.取っ手を付ける
取っ手用MDFを5枚重ねて、ボンドで接着して50mmの厚さにします。そのMDFを扉の内側の不織布に押し当てて、印を付けます。その印にそって不織布とMGボードをくり抜いて、そこにMDFを入れます。そして、長いネジを使って、そのMDFと取っ手と扉を固定します。
そのままだと、MDFがむき出しになってしまっているので、不織布や黒いダクトテープを使って誤魔化します。

13.防音カーペットを敷く
防音マットの上から防音カーペットを敷きます。

14.仕上げ
本体に壁紙を張ったり、サイレンサー含む天井部を白いダクトテープで覆って誤魔化したりします。必要があれば白いダクトテープで補強します。

7.まとめ

さぁ、ついにまとめです。上で見た通り、製作費は14万円でした。製作時間は大体1ヶ月ぐらいです。かかった労力は計測不能ですが、とにかく疲れたことだけは完成から2年経った今でも覚えています。外ではアルバイト、家では防音室製作、最早ずっと働いているような感覚でした。まぁ、自分で勝手にやっているだけですが……ともかく、そんな労働地獄を経て思うことが一つあります。

だんぼっちトールをMGボードで改造した方が、楽だったのでは?

もしそうしていたら、冒頭で計算した通り、約15.6万円かかります。単純に比較すれば、自分で防音室を作る方が安上がりです。差額は約1.6万円なので、それが節約出来るならと思って僕は防音室を作ることにした訳ですが、かかる労力については全く計算していませんでした。というか、ただ木で箱を作ってそこに色々と貼るだけだから、大したことじゃないし楽勝だろうと思っていました。

いざ製作に入ってみると、踏んだり蹴ったりでした。いきなり箱の組み立てに失敗したり、途中でサイレンサーが必要なことに気付いたり、他にも色んな物が必要になってきて何度もホームセンターを往復したりという具合です。

それに、防音室を作ったからといって、そこでゲームクリアではありません。まだ、一大イベントが残っています。それは「引っ越し」です。
いつどこに引っ越すか、今のところ予定はありませんが、その時はいずれ必ずやってきます。こんな重たくて部屋から出せるかどうか分からない大きさの物を、引っ越し先に持っていこうとは端から思っていません。
つまり、次は「ものぐさ防音室解体記」という文章を書くことになりそうです。その時は写真を無くさないようにします。

という訳で、1.6万円を節約して地獄を味わうぐらいなら、もしかしたら「だんぼっちトール」+「MGボード」の方が、楽で良かったかもしれないという曖昧な結論になりました。段ボール製なので、引っ越しの際に処分したり分解して持ち運んだりすることも容易な気がしますが、実際に買って試した訳ではないので、何とも言えません。いつか試す機会があれば「ラ防音室」と性能を細かく比較してみたいと思います。

最後に今後の抱負的なことを述べます。もし、また防音室を作るとしたら、土台があって低音を遮音出来て扉が閉めやすい物を作りたいと思います。そして、出来れば地震のない土地に引っ越して作りたいものです。

そんな予定もお金もないのに、つい頭の中で空想を繰り広げてしまいます。疲れた疲れたとは言いながらも、なんだかんだDIYは楽しいのです。

8.おわりに

参考にした文献を紹介します。

積載荷重について、以下のページを参考にしました。

(荷重)積載荷重は一般にどのくらいまでOKなのですか(1-5):日本建築構造技術者協会

『荷重』- 積載荷重:日本建築構造技術者協会

音の仕組みや防音について、以下の書籍を参考にしました。

音のなんでも小事典―脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで/講談社/日本音響学会(編集)

断熱・防湿・防音が一番わかる しくみ図解/技術評論社/山口温,柿沼整三,遠藤智行,荻田俊輔(著),柿沼整三(監修)

自作防音室について30分で簡潔に紹介する動画を作りました。この文章を読了した方にとっては、全部聞き覚えのある内容だとは思いますが、良かったらどうぞ!

自作防音室をざっくりと紹介

感想や質問やツッコミは、Twitterかメール(トップに記載あり)までどうぞ!

9.追記

頂いた意見や質問をここに掲載します。

2021/02/18 本体の側面にサイレンサーや換気扇を取り付けて、天井の穴から距離を取ると消音効果が高まるという意見を頂きました。また、換気扇はPC用の静音ファンを使うと良いそうです。次回作る時の参考にさせて頂きます。ありがとうございます!

10.更新履歴

2021/02/18 文章表現の修正。追記の項目を作り、頂いた意見を掲載。
2021/02/09 ファイルサイズ軽量化。文章表現の修正。
2021/02/08 消音について加筆。「5.材料と道具」以降加筆。
2021/02/03 挿絵(02.gif)を追加。

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