ものぐさ防音室製作記

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著者:何野周
公開日:2021/02/01
最終更新日:2021/02/18

目次

  1. はじめに
  2. 作った理由
  3. これが「ラ防音室」だ
  4. 積載荷重とは
  5. 材料と道具
  6. 製作過程
  7. まとめ
  8. おわりに
  9. 追記
  10. 更新履歴

1.はじめに

このテキストは、面倒くさがりのDIY初心者による防音室製作記です。飽くまでも初心者が書いた物なので、防音室製作に興味がある方には、このテキストだけではなく、他の文献にも当たってみることを強くお勧めします。

それでは、はじまりはじまり。

2.作った理由

2018年の冬頃、僕は音楽スタジオに通って、歌を録音したり楽器を練習したりしていました。
家からスタジオは、徒歩30分、電車を使えば20分の距離があります。運動不足の解消、または電車代130円をケチるという目的の為に、徒歩で通うこともよくありました。
スタジオに入って初めにやることは、機材の準備です。備え付けのパイプ椅子の上に、ノートPCを置いた後、そのPCにオーディオインターフェースやマイクを取り付けます。

こうして、ようやく作業が始まります。そこからはもう、あっという間に2時間近く経って、気が付けば退室時間間近です。
慌てて機材を片付けて、最後に受付で1000円を払います。バンド練習ならもっとお金がかかりますが、個人練習なので1時間500円で済みます。
そんな毎日を続けていると、段々と色んなことが面倒になってきました。家から外に出るのが面倒、機材を準備するのが面倒、お金がかかるのが面倒。例え2時間1000円という安めのスタジオ代でも、1カ月通えば3万円になります。かなり痛い出費です。
さらに面倒なことがあって、それは、あまりにも同じスタジオに通い過ぎて、スタジオの人に話しかけられ始めたことです。

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当時の僕は、ただやることをやって、誰とも話さずに帰りたいと思っていました。まるで、ずっと通っている飲食店で店主に話しかけられ始めて、次第に店に来なくなる人のようです。人間としてどうなんだと自分でも思いますが、事実なので仕方ありません。
そんな数々の面倒ごとに頭を悩ませていたら、ふと一つのアイディアが思い浮かびました。


家に防音室があればいい!

そしたら、全ての面倒ごとから解放される!

だからといって、いきなり防音室を作ろうと思った訳ではありません。目の前には、三つの選択肢が現れていました。

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DIYレベル1の僕が、いきなり「作る」を選んだら、きっと生きて帰れない……そう思ったので、まずは「借りる」ことを考えました。
そして、調べていると「セフィーネNS 0.8畳タイプ」という商品が見つかりました。

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通線穴とは、マイクケーブル等を通す穴のことです。この穴が無いと、録音機材を防音室内に持ち運ばなければいけなくなります。スマートフォン等の小さい録音機材を使う場合は、無くても問題ないかもしれません。
音場パネルとは、防音室内の音響に関わる物で、パネル内部にある吸音材の枚数を調節することで、自分好みの響きを作れます。
詳細については、下の公式ページを見て下さい。

セフィーネNS カタログ

音レント(セフィーネのレンタルサイト)

カタログを見た限り、かなり高性能な防音室です。自分で作るより、これを借りた方が楽なことは間違いないでしょう。だけど、ただ一つ気がかりなことがあって、それはやっぱりレンタル料です。

月約1万円。毎日スタジオに通うと3万円かかるので、それに比べたらかなり安上がりですが、当然、借りている間はずっと払い続けなければいけません。
僕は、2年か3年の間レンタルしたいと思いました。そうすると、最低でも約24万円かかる計算になります。そのお金があれば、もっと安価でシンプルな防音室を「買う」ことが出来るのではないかと思い「借りる」ことを諦めました。

お金に余裕がある方や、高性能な防音室が欲しい方は、試してみてはいかがでしょう。試してみたいけど「294 kg」の重い物を家に置けるのかどうか不安な方は「積載荷重」の項目を読んでみて下さい。

防音室を「買う」ことを考え始めた僕は、また我武者羅に検索しました。そこで見つけたのが「だんぼっちトール」です。

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名前の通り「段ボール」で出来ていて、中に入って「ぼっち」になれます。そう聞くと、どうしても安部公房の「箱男」を思い出してしまいます。メタルギアソリッドを思い浮かべた人もいるでしょう。

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まぁ、それは置いといて。

「だんぼっち」にはいくつか種類があって、一番安い「だんぼっち(無印)」は、内寸の高さが148 cmなので、165 cmの僕は中で立つことが出来ません。ゲーム実況や勉強といった用途なら「無印」でも問題ありませんが、僕は立って歌を録音したかったので「トール」に目を付けました。
他にも「ワイド」や「グランデ」といったエディションが用意されていて、だんぼっちを強化する為の「換気ファンユニット」や「吸音材」等のオプション品も用意されています。
例によって、詳細については下の公式ページを見て下さい。

だんぼっち 公式ページ

公式によると「無印」は、怒鳴り声(90 db)の音量を、話し声(60 db)ぐらいまで下げる防音性能があるようです。「トール」のデータは載っていませんが、恐らく同程度の性能があるのでしょう。

僕は、さらに強力に防音出来ないものかと考えました。例えば、怒鳴り声がひそひそ声になるくらいに。なぜそんなことを考えたのかというと、隣人に苦情を言われるのがとても怖くて、面倒だったからです。出せる費用の範囲内で、出来るだけ防音性能を高めたいと思いました。

だんぼっちの補強には、先ほど紹介したオプション品の「吸音材」を使う方法がありますが、厚さが1 cmなので、結構薄くて心許ない気がしました。

もっと分厚くて強力な物が欲しい。そう思いながら調べていると「MGボード」という物を見つけました。

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5 cmと結構な厚みがあり、何より「プライベートスタジオの自作に!」と書いてあります。まさに、僕が求めていた物です。

よし!これを買って最強のだんぼっちを作ろう!そう意気込んで、最終的にいくら費用がかかるのか計算しました。


材料名価格(税込)小計
MGボード 8枚入17,200円234,400円
だんぼっちトール(本体)94,800円194,800円
だんぼっちトール(送料)19,525円119,525円
強力両面ボンドテープ2,805円25,610円
突っ張り棒 85 cm~120 cm165円3495円
ダクトテープ536円21,072円

※送料は、兵庫県へ配達する場合の金額です。

合計:155,902円!


……もしかして、だんぼっちを買うよりも、木の板を買って自分で箱を作って、それを防音加工した方が安く済むのでは?

そう思って計算してみたら、やっぱりそうでした。どんな計算方法だったのかは、今となってはもう思い出せません。かなりテキトーだったことだけは間違いありません。

ともかく、ここにきて最初に消した「作る」という選択肢がまさかの復活を遂げることになったのです。

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多少手間がかかっても、安く済むんだったら作ってみよう。貧乏なので、そんな風に安い方安い方へと考えが収れんしていく傾向があります。

……という訳で、以上が防音室を作ることになった理由です。それでは、次はさっそく完成した防音室について見ていきましょう。ここからは、技術的な話が中心になります。

3.これが「ラ防音室」だ

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初めに、名前の由来から説明します。
最初は、このHPの名前「カエルラボ」から「ラボ」をもらって「ラボ防音室」にしようと思いましたが、語呂が悪いので「ラ防音室」に変えました。フランス語みたいでいいと思います。「ラ」は女性名詞に付く定冠詞だけど「防音室」が男性名詞なのか女性名詞なのかは、よく知りません。

次に、装備品ですが、換気扇と通線穴という最低限の物しかありません。照明は付いていないので、中は真っ暗です。でも、スマホのライトを使えば、どの位置にマイクがあるかぐらいは分かるので、何とかなります。

製作費については最後に、重量については途中で触れたいと思います。

さて、上の絵を見ただけでは、本当に防音室を作ったのかどうか疑わしいと思うので、写真をお見せします。まずは、外観です。

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この白い巨大な冷蔵庫みたいな物が「ラ防音室」で、手前にあるギターと比べることで、大体の大きさが感覚的につかめるかと思います。全体的に白いのは、壁紙を張っているからです。本当は茶色い木材で出来ています。側面にはフックを取り付けて、リュックやギターケースをつるしています。

次に、防音室の天井部を見て下さい。何やら四角くて平べったい箱のような物があるでしょう。これは、サイレンサーという装置で、詳しいことは後から説明します。その上にある青いキノコのような物は、トイレ用の換気扇です。

それでは、扉を開けてみましょう。

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こんな感じで、真っ黒です。真ん中にはマイクスタンドが見えます。
写真だけでは、防音室全体がどういう構造になっているのかが分からないと思うので、図を使って説明していきます。サイレンサーや換気扇以外の部分、つまり大きな箱の部分を「本体」と呼ぶことにします。下はその設計図です。

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「本体」は、MDFという木材で作られています。MDFで作ったこの大きな箱の内側に、防音材を張り付けて防音加工を施すことで、ようやく防音室と呼べる物になります。防音材の部分まで含めて図にすると、何が何だか分からなくなってしまうので、あえて省略しています。

この図を見ると、色々と突っ込みどころが思い浮かぶと思うので、一つ一つ説明していきます。

1.なぜ土台がないの?
土台というのは、建物の安定性に関わる物です。なぜそれがないかというと、簡単に言えば手抜きです。作るのが面倒でした。
製作に興味がある方には、ちゃんと土台を作ることをお勧めします。
2.内部にある横長い木材は何?
どういう名称なのかは分かりませんが、この木材がない状態で扉を閉めると、扉が際限なく防音室内に侵入してしまうので、絶対に付ける必要があります。
3.天井板と床板のサイズが違うのはなぜ?
天井板は、全ての板を覆えるサイズにすることで、落ちてこないようにしています。床板は、それに比べて少し小さなサイズです。なぜなら、床板の周りを壁板で覆うような形で、床を作っているからです。
4.扉の高さや厚みが壁板と微妙に違うのはなぜ?
当初は、壁板と全く同じ寸法の板を扉にする予定でしたが、取り付けに失敗して、無駄になって廃棄しました。その後、新しく扉の板を買う際に、もう少し軽い物が欲しかったので、厚さ9 mmの物を選びました。12 mmだと少し重くて、扉を開ける時に疲れるのです。
高さに関しては、なぜわざわざ1820 mmにしたのか、今はもう思い出せません。近所のホームセンターに、そのサイズの物しか置いていなかったのかもしれません。ネットで買う手もありましたが、年末に差し掛かっていて、届くのが遅くなりそうだったのが我慢出来なくて、ホームセンターに駆け込んだことは覚えています。
5.内寸の高さが結構低いのでは?
その通りです。換気扇の高さまで含めると全体で1994 mmありますが、内寸は約1750 mmぐらいしかありません。内部の防音材の厚みを考えると、それぐらいになります。僕は身長165 cmしかないので問題ありませんが、そこそこ背が高い人にとっては、やや使い辛い防音室ということになるでしょう。

次は、内部の構造について見ていきます。

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まずは、壁と扉と天井の構造から説明していきます。
一番外側に白い壁紙があって、その内側にMDFがあって、さらにその内側に遮音シートが張られています。

遮音とは、その名の通り、音を遮断することです。遮音シートを張ることで、防音室内にいる人は、室外の音があまり聞こえなくなります。でも、遮音の処理を施しただけでは、下の図1のような状態になります。

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つまり、音が壁に当たって反射して、室内で鳴り響いてしまうのです。その状態で歌を録音すると、マイクが声と一緒に反射音まで拾ってしまい、後から歌にエフェクトをかけて、思い通りの残響を作ることが難しくなってしまいます。

それを防ぐ為に、遮音シートの上にMGボードという吸音材が貼られています。吸音とは、音を吸収することです。吸音材を貼ることで、音が吸収されて、室内で反射し難くなります。その結果、無駄な反射音のないドライな音を録音出来るようになるのです。

もし、遮音の処理はせず吸音の処理だけ施してしまうと、上の図2のようになります。室内では反射音が聞こえなかったとしても、実は音が外に漏れ出てしまっています。
遮音と吸音、どちらも防音を実現する為に重要な要素です。

最後に、吸音材の上から黒い不織布を張り付けています。僕が購入した吸音材は白いガラスクロスで覆われていて、それがむき出しのままでは格好悪いと思ったので、上から不織布で誤魔化しただけです。別に必須ではありません。

次に、床の説明に移ります。
床は、壁と扉と天井に比べるとシンプルで、防音マットと静床ライトというマットが乗っかっているだけです。どちらも、下に騒音や振動が伝わらないようにする為の物です。本当は、床にも吸音材を貼り付けても良かったのですが、そうなるとより内寸の高さが低くなってしまうので止めました。

床に吸音材がなくても、今のところ、誰からも騒音の苦情が来たことはないので、多分大丈夫なのだと思います。それは、僕が住んでいるマンションが、鉄筋コンクリート造という比較的防音性の高い造りになっているからかもしれません。

さて、こうして内部の構造や防音の仕組みについて説明しましたが、実際のところ、どれぐらい防音出来るのかを具体的に示す為にある実験をしました。

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実験1
防音室内で、僕がiPhoneに向かって叫びます。iPhoneでその音と数値(db)を記録します。
実験2
防音室内で、僕が扉に向かって叫びます。扉の外側に貼り付けたiPhoneで、その音と数値(db)を記録します。

実験1と実験2の音を実際に聴いて、数値を比べてみることで、どのぐらいの防音性能があるのかを、これからお見せします。db(デシベル)とは音の強さのレベルを表す単位で、下図のような目安があります。

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dbの測定には「騒音測定器 - Simple Sound Meter」というアプリを使いました。
それでは、実験に入る前に、実験前の防音室内のデシベルを見てみましょう。

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18 db、まさに上の目安図でいう「録音スタジオ」ぐらいの静けさになっています。それでは、実験1と2、続けてお聴き下さい。


音量注意!


いかがだったでしょうか。音で聴いただけでも、実験1と2でかなりの音量差があることが分かると思います。もし、僕が実験1のような声を日夜発していたら、すぐにマンションを追い出されることでしょう。それでは、数値でも確認してみましょう。

まずは、実験1の数値です。

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「電車内・飛行機内」ぐらいの値なので、かなりの音量です。本当は「だんぼっち(無印)」の防音性能と比較する為に、90 dbぐらいの声を出したかったのですが、出ないので諦めました。

次は、実験2の数値です。

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「図書館」ぐらいの値まで落ち着いています。

これで「ラ防音室」が、それなりの防音性能を持っていることが分かりました。76 dbを44 dbに抑えたので、約30 dbの防音性能があると言えますが、これは飽くまでも人間の声を鳴らした場合に限った性能です。低音域を多く含む音に対しては、性能が落ちると思います。
冒頭で紹介した「だんぼっち(無印)」も「歌・チャットに最適です。」とうたっています。そして、90 dbを60 dbに抑えることが出来るので、約30 dbの防音性能があると言えるでしょう。
僕は思いました。


あれ……苦労して作った「ラ防音室」とほぼ同じ性能だ……

ややモヤモヤした気分になってしまいましたが、ここで止まっている場合ではありません。書くことはまだ山ほどあるので、とりあえず先へ進みましょう。次に見ていくのは、天井の穴です。

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なぜ穴が開いているかというと、換気する為です。左の吸気口から、室外の空気を取り込んで、右の排気口から室内の空気を外に排出する仕組みになっています。
でも、ただ天井に穴を開けてその上に換気扇を置いただけでは、室内の音がそのまま外に漏れ出たり、換気扇の音が室内に侵入してきたりします。それでは防音室を作った意味が無くなってしまいます。
ここで登場するのが、冒頭で少し触れたサイレンサーです。サイレンサーを使うことで、換気扇の音を抑えることが出来ます。そのことを、消音と言います。

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サイレンサーも本体と同じくMDFで出来ていて、その上から白いダクトテープを貼り付けて、木の色を隠しています。本体と同じように、壁紙を張っても良かったのですが、天井の方なのであまり気にならないだろうと思って、ダクトテープで誤魔化しました。奥に見えるのは地震対策の家具用突っ張り棒です。
それでは、サイレンサーの設計図を見ていきましょう。

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こんな感じの寸法になっています。さっそく蓋を開けてみましょう。

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こんな風に、中身はジグザグとした迷路のようになっています。○は穴です。さっき見た天井の穴が、ここにつながっています。穴を通った音は、壁にバシバシとぶつかって、減衰していきます。
MDFの上にパンチカーペットを貼っているのは、より減衰の効果を高める為です。硬い木より柔らかいカーペット方が音を吸収しやすいのです。
次は、蓋です。

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これといって、特筆することはあまりありません。
こうしたサイレンサーを使って消音する方法を「パッシブ(受動的)消音」と言います。

さて、そのパッシブ消音システムは、果たして正しく動作しているでしょうか?ここでまた、ある実験をお見せしましょう。
下は、防音室外の吸気口の動画です。

換気扇のスイッチを入れた後、吸気口の上に置いたティッシュが吸い込まれ始めました。
次は、室内の排気口の動画になります。

換気扇を動作させることで、排気口にあてがったコピー用紙が吸い込まれて、天井に張り付いています。換気扇のスイッチを切ってしばらくすると、コピー用紙は下に落ちました。

どれぐらいの空気を吸い込んで排出するのがベストなのかは、知識不足の僕には分かりませんが、とりあえず換気自体は行われているようです。

次に、換気扇を回した状態で防音室内の音を聴いてみましょう。


残念ながら、かなり換気扇の音が聞こえてしまっています。この状態で歌を録音すると、思いっきり換気扇の音まで入ってしまいます。つまり、消音には問題ありということになります。
完璧な消音には失敗しましたが、消音効果がゼロだった訳ではありません。ここで、防音室の外から換気扇の音を聴いてみましょう。


当然といえば当然ですが、室内の音に比べてより耳障りな音です。ということは、多少は消音出来ているということになります。数値でも確認してみましょう。
下は、防音室外から聴いた換気扇の音のスペクトラムメーターです。スぺクトラムメーターとは、その音が低音域や高音域をどれぐらい含んでいるかを、目で確かめる為の物です。

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この音は、低音域から高音域まで、満遍なく含んでいるようです。次に、防音室内から聴いた換気扇の音を見てみましょう。

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中音域である500 Hz(ヘルツ)ぐらいから高音域にかけて、約30 dbほど削れています。サイレンサーも全く頑張っていなかった訳ではないのです。でも、あの小さなサイレンサーでは、低音域を削ることは出来なかったようです。
一般的に、高い周波数の音は防音しやすく、低い周波数の音はし難いと言われています。その理由の一つに、音の回折という性質があります。回折とは、音が障害物の裏側にも伝わることです。音の波長が障害物の寸法よりも大きい時ほど回折しやすくなります。
波長は、音速÷周波数で求められます。空気中の音速は約340 mなので、例えば1 kHz(1000 Hz)の音の波長は、約34 cmということになります。100 Hzなら約3.4 mになります。つまり、低い音ほど波長が長くなるので、回折しやすいのです。
ということは、パッシブ消音で低音を遮音する場合、巨大なサイレンサーが必要になってきます。とても作るのが大変そうです。でも、実は他にも消音する方法があります。それは「アクティブ(能動的)消音」です。

「アクティブ消音」とは、騒音をマイクで拾って、その音を逆位相に変換して、それをスピーカーから出力して騒音にぶつけて消音する方法です。逆位相とは、音の波形を上下反対にした状態のことです。通常の音と逆位相の音の山と谷が打ち消しあうことで、音が消えます。

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PCを使ってその効果を体験出来ます。適当な音声データを用意して、DAW上で複製して2トラック作って、片方を逆位相にして、二つの音声を同時再生してみて下さい。何も聞こえなくなるはずです。

今回は、実際に「アクティブ消音」を試してみる余裕がありませんでした。いずれ試すことがあれば、記録したいと思います。

長々と言い訳を書きましたが、結局、僕は消音に失敗しました。この状態で歌を録音して、後からAudacityやiZotopeのRx8といったソフトで、換気扇の音だけ消すことも出来るとは思います。でも、後から消すぐらいなら、初めから入れない方がいいので、なんと換気扇を使わずに録音しています。

というのも、防音室内に長居することがないからです。パソコンの録音スイッチを押すのも、室内で歌うのも僕なので、いつも出たり入ったりしています。

そう思うと、より空しくなります。作る必要も無かったし、作ったところで失敗しているし……いや、これはDIY修行の一環だ。そう思い込むことにします。
防音性能の実験結果に引き続き、サイレンサーの実験結果でもダメージを負いましたが、まだライフは残っているはずです。先に進みましょう。次は、通線穴です。

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左の黒いブロックは、MGボードの塊です。通線穴にコードを通したあと、このブロックで塞ぎます。MGボードは硬い物ではないので、コードを断線させたことは今のところありません。

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外から見たらこんな感じです。
次は、室内の上の取っ手です。

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わざわざ「上の取っ手」と言っているのは「下の取っ手」があるからです。次の画像がそれです。

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なぜそんな謎の取っ手があるかというと、上の取っ手を引っ張っただけでは、扉の上の方だけ閉まって、下の方が上手く閉まらないからです。記号で表すなら「/」のような感じになります。だから、下の方からも引っ張る為に、仕方なく取っ手を付けました。
下の取っ手だけ周りに謎の空間があるのは、埋めるのが面倒だったからです。そこだけ吸音材がない状態になっています。仕方ないので、防音室を使う時は、その空間に毛布をあてがって誤魔化しています。意外にそれでも何とかなるものです。

これで、大体の紹介は終わりました。それでは、ここでようやく「重量」について触れてみたいと思います。
「ラ防音室」の重量は、141 kgでした。こんな結構重たい物を、部屋に置いていいものなのでしょうか。そのことを考える為に「積載荷重」について見ていきます。

4.積載荷重とは

「積載荷重」とは、人や家具や設備などの重さのことで、建物の用途によって変わります。建築基準法施行令85条によると、住宅の居室の床は、1800N/㎡の積載荷重がかかっても大丈夫なように作られていなければなりません。下図のようなイメージです。

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つまり、1㎡辺りに1800Nの力がかかっても、床が抜けないように作りなさいという意味です。床のどこかの1㎡の部分にかかる力が1800Nを超えたら、即座にそこだけ下に抜け落ちてしまうというような意味ではありません。
もし、そんな床があれば、そこに友達を数人呼んで1㎡の範囲に寄り集まった瞬間に、全員下に落ちてしまいます。そんなファミコンのミシシッピー殺人事件に出てくるような床は、あまり存在しないと思います。

やや話が逸れましたが、僕の家の床も、誰かの家の床も、1800N/㎡まで耐えられるはずだということです。もちろん、床が劣化してボロボロになってしまっている場合は除きます。

仮に、僕の家の床面積が約16㎡だとしましょう。狭過ぎると思うかもしれませんが、ワンルーム住まいなので仕方ありません。それで話を戻すと、僕の家の床には、合計28,800Nの物が置けることになります。計算式は以下です。


16㎡×1,800N=28,800N


あえてkgにすると、2800 kgになります。結構な量の物が置ける気がします。でも、油断は禁物です。下の図を見て下さい。

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AもBも、どちらも合計2800 kgだとします。Aは力が均等に分散されていますが、Bは力が一か所に集中していて、危険です。
どんな重さで、どんな形の物を、どういう風に置くかによって、床にかかる力は変わってきます。だから、冒頭に紹介したセフィーネNSのような重たい物が部屋に置けるかどうかは、その部屋が今どんな状態なのかが分からないと、判断出来ません。
音レントのページにも「防音室設置に対する家屋の耐荷重は、家屋の状況やその他の荷重状態等にも因るため、最終判断は建設会社、ハウスメーカーなどにお問い合わせ下さい。」との記載があります。

ちなみに、僕がマンションの管理人さんに「294 kgの防音室を自宅に置いていいですか」と聞いてみたところ「ダメ」と即答されました。
管理人さんではなくて、もっと詳しい方に聞くべきだったのかもしれませんが、そこで本当に「ダメ」なのか気になって、調べてたどり着いたのが「積載荷重」という考え方でした。
「ラ防音室」については、2年間置いていますが、今のところ床は抜けていません。でも、しつこいようですが、例えば既に本が滅茶苦茶置いてあって今にも崩壊しそうな床の上に置くと、当然ですが抜けると思います。劣化してボロボロになった床についても同じことが言えるでしょう。製作に興味がある方は、その辺りについて気を付けて下さい。

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